プロローグ
1983年の夏、研究室で仲間とひたすら勉強していた、大学に入ってはじめての勉強だけの生活。
その時から、すでに現在は決定していた。院試に合格し、2年のモラトリアムが与えられた。しかし、M2
になれば就職のこともあり、これが最後のロングツーリングになるかもしれない。「さすらいの野宿ライダー」
なる本を読み、野宿のよさも味わった。社会という大きなしがらみに、これからだんだん身を浸していく自分に
とって、それは単なる逃避かもしれないが。バイクと野宿という自分だけの自由な時間を求めて、研究室という
まだ小さいしがらみも断ち切った。
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出発前。下宿の前で研究室の同期の田中と。同じく同期の横小路は1週間遅れて京都を発ち、北海道で
合流。その後、田中と別れ、さらにその後、横小路とも別れ、最後は3人とも独りとなる。
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7月8日
小樽―幌向―富良野―然別湖―糠平湖
走行328Km
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小樽港にて。
2年ぶりの新日本海フェリーは、前ほど揺れることもなく、順調に俺たちを北海道へとはこんでくれた。
R5で夜明け前の美しい海を見ながら札幌へ。札幌を過ぎ、岩見沢へ向かうが天気が悪くなり寒い。
バイクも調子が悪く、信号で止まるとエンスト。こんなバイクでこれからの長旅を走りきれるかと不安になる。
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R12の日本一長い直線路は、一昨年より大分広くなっている
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富良野付近にて
滝川から富良野への途中の歌志内は炭鉱の街で独特の雰囲気がある。
夏だというのに、石炭のにおいと、特徴のある家並。
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狩勝峠の上り口
R38に出ると快晴。田中のナナハンは流石に速く、GN400のパワー不足を感じる。
チェーンの片伸びは気になったが、天気のよさで何となくバイクの調子もよく感じる。
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狩勝峠にて
コーヒーを沸かし、しばらく景色をながめる。ハンググライダーが高く舞っている。十勝平野はかすんでいる。
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扇が原展望台
新得から道道で然別湖へゆく途中のタイトな峠越え。
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然別湖畔
静かでいい処だった。時間が早いので糠平湖まで行ってキャンプ。だが、糠平湖はまったく良くなかった。
夕食後、近くの旅館の風呂に入り、ビール・ウイスキーを飲んで、三重大3回生のCM400君と遅くまで
話す。夜は快晴。満天の星空。寒いのでたくさん着込んで寝る。
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7月9日
糠平湖―層雲峡―留辺蕊―美幌―和琴半島
走行243Km
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朝、CM400君と
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R273のダートにて
ラベンダールピナスがたくさん咲いていた
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R273の三国峠を越えたあたり
ダートは対向車が来ると埃がすごい。振り分けバッグにフィッシュテールマフラーの先があたって穴があき、
持っていた米を半分もこぼしてしまった。
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大雪ダム
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層雲峡
一昨年も来たが、どうも迫力不足
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大雪国道、美幌町を過ぎたあたり
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美幌峠 完全な曇り空
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屈斜路湖と中島
霧の中、コーヒー沸かして粘っていたら、やっと見えた
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和琴半島でキャンプ
今日も食後、近くの温泉に。疲れたので早く寝る。
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7月10日
和琴半島―美幌峠―砂湯―裏摩周―緑―摩周―オンネトー
走行234Km
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朝起きたら快晴。やったね。
バンガローに山梨のオフロード2人組がいた。MTXとKL。朝、津別峠に行ってきたそうだ。
来年は俺もオフで来たい。
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出発前
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昨日は天気が悪かったので、もう一度美幌峠に登る
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斜里岳
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砂湯にいって、男二人でボートに乗る
ガキのような髪型が最悪
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アトサヌプリ(硫黄山)付近の道道
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アトサヌプリは入場料をケチって遠くから写真撮っただけ
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洗濯板ギャップのダートを走って裏摩周展望台へ
裏摩周よりのカムイヌプリ山
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湖畔に下りたのはいいが、帰りの登りがきつかった
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裏摩周からR391まで戻る途中でガス欠
摩周湖の展望台までのワインディングでは荷物のせいかピッチングが大きく安定しない。
エンジンもカラカラとノッキングしていた。
表から見る夕日をうけた摩周湖は、水面も青く、裏より美しかった。
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←摩周湖から見る斜里岳
第三展望台より、西の方、屈斜路湖を望む→
京都ナンバーのCBXがいた。一見暴走族風。
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弟子屈で食料を買い、夕日に向かって走って阿寒湖へ
100Km/h以上でひたすらはしる。目の前は夕日にすべてがシルエット。
その中を2台のバイクが走ってゆく。感動的だ。
双湖台・双岳台にちょっと寄る。
Rの大きなコーナーの続くワインディング、前をゆくCB750Fの田中がかなりせめる。
GNはギャップのたびにスタンドが接地し、少々こわい。
阿寒湖を過ぎ、峠ひとつ越えるとやっとオンネトーへの分岐。玉石のダートとなり、
フロントを取られてコケそうになる。やっとの思いでキャンプ場に着くと高校生の団体。
うるさくてしょうがないので、Uターンしてダートの中の空き地にテントをはる。
ニシンを焼いて夕食。もう暗くなった。
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双岳台より夕日の雄阿寒岳
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7月11日
オンネトー―阿寒湖―弟子屈―中標津―開陽台―標茶―シラルトロ湖
走行216Km
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キャンプ地より早朝のオンネトー
バックは雌阿寒岳と阿寒富士。これらの影が水面に映ると唇のようにみえることから唇山とも呼ばれる。
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双岳台でコーヒーを沸かす。
右が雄阿寒岳、左後方が雌阿寒岳。
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双湖台よりペンケトーとパンケトー
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阿寒湖畔にて
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開陽台あたりの直線路
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開陽台
眺望は霞んでいていまひとつ
バイクの名所(溜まり場)ということだが、一台もいない。
観光地にしようと工事をしていた
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冬に列車で来たシラルトロ湖でキャンプ
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7月12日
シラルトロ湖―岩保木―厚岸―あやめが原―風蓮湖
走行196Km
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遠矢で国道をはずれてダートを岩保木山へ
途中にバイクをとめて歩いて山頂に登る。
朝靄の湿原が、晴れて展望がひらけてくる。
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岩保木山をおり、砂利のダートを走って湿原の中へ。
川の向う岸では牛がのんびり草を食んでいる。
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厚岸からアイカップ岬、霧多布を走るが霧で何も見えない。
R44を風蓮湖まで走り、東梅の砂洲で野宿。温根沼には熊に注意の看板がありちょっとビビる。
風蓮湖は夕日が美しかったが、すぐに霧で見えなくなった。
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風蓮湖のテントの中からコールマンNewPeakOneストーブとハンゴウ
ツーリングのよき友だ。
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7月13日
風蓮湖―納沙布岬―落石岬―走古丹―尾岱沼
走行187Km
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風蓮湖にて、出発前
対岸にみえる木々が独特だった
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納沙布岬にて
霧はこの後だんだん晴れていった。
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落石岬
長く真っ直ぐな木の道を歩いてゆくと一面の緑。それが急傾斜で海に落ち込んでいる。
断崖にはカモメが営巣している。徐々に霧が出始め、霧笛が鳴り出す。
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風蓮湖の北側の砂洲、走古丹にて
国道をそれ、人家のまったくない道をしばらく走ると集落がある。
湖を渡る風は冷たく、実に寂しい処だ。R44から見た明るい風蓮湖とは一味違った茫々とした風景。
この道はこの先どうなっているのだろう。
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走古丹でのこの写真を最後にカメラが壊れた。シャッターが下りっぱなし。
尾岱沼にはカメラ屋が無く、明日はカメラなし。
漁港でホタテとエビを買い、青少年旅行村キャンプ場へ。やっと海の幸にありつけた。食後、温泉に行って
露天風呂に入った。
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7月14日
尾岱沼―野付―標津―羅臼
走行156Km
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朝からの雨が次第に強くなる。はじめてカッパを着る。走り出すと、ほとんど土砂降り。
雨の野付半島は、独特の寂寥感があった。
標津でカメラ屋に行くと、釧路くらいでないと修理できる店はないとのこと。サロマ湖で横小路と合流するまでは
カメラなし。今日は雨だからいいが、知床でカメラなしは痛い。羅臼で民宿に泊まるか迷うが、キャンプ場に行くと
バイクが10台くらい居るのを見て、つられてキャンプ。
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7月15日
羅臼―知床峠―知床五湖―宇登呂
走行87Km
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朝、雨は止んでいたが、出発の用意をしていると突然降り出す。鬱陶しい天気だ。
羅臼は相変わらず霧。知床横断道路を登っていく。一昨年はここで霧が晴れたのだが、今回はダメ。
知床峠でほんの一瞬晴れて羅臼岳が見えた。峠を下ると快晴。知床五湖に行く。1湖と3湖がよかった。
知床林道で、知床大橋へ。帰りにカムイワッカの滝で入浴。
記念写真が撮れず残念。
帰りの林道でいい調子になって飛ばしすぎてコケてしまった。幸い、ブレーキレバーとペダルが曲がった
くらいで、怪我も擦り傷だけ。しかしTシャツ一枚の軽装はまずかった。自重しなくては。
宇登呂でキャンプ。ビールのほろ酔いで夕日台から夕日を見る。
静岡の自転車野郎と、山口からの老夫婦と、キャンプ場のおじさんも来て、しばらく話をする。
山口のおじいさんは絵を描いている。贅沢な旅だ。
夕日は真っ赤。海に沈む夕日でこんなに赤いのを見たのは初めて。旅のよさを感じる瞬間だ。
食後、自転車野郎と3人でYHの風呂に行った。
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7月16日
宇登呂―網走―サロマ湖
走行186Km
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9時出発。自転車野郎と山口の老夫婦はもう一日宇登呂に居るそうだ。
オシンコシンの滝を見ただけであとは走る。網走で洗濯やいろいろな買い物。
カメラは結局、札幌のペンタックスに修理に出す。
4時に、横小路との待ち合わせ場所、サロマ湖の竜宮台に着くが、まだ来ていない。
1時間くらい待っても来ないのでテントを張って夕食の買出しに行くと、むこうから
見憶えのある白いヘルメットが・・・ やっと来た。層雲峡など見てきたそうだ。
今夜はホタテの刺し身とつぼ焼き。みんな空腹で6合の飯がほとんどなくなった。
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7月17日
サロマ湖(竜宮台)―幌岩山―浜佐呂間―能取岬―サロマ湖(栄浦)
走行151Km
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今日から横小路のカメラで写真が復活。
昨夜は雨と風と、蚊の来襲でほとんど眠れなかった。朝、一日雨という天気予報に反して晴れてくる。
GN400はチェーンとスプロケットを交換、横小路のXT250はパンク修理などと各自、バイクの
整備。昼過ぎに出発。
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林道登って幌岩山展望台へ
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R238沿いの小麦畑
一面の黄金色、遠くには緑の木々
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サンドイッチで昼食
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南方、キムアネップ崎などを望む
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左右から長く伸びた砂洲
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幌岩山をおりて能取岬へゆく。
岬へのダートは昨日の雨で埃も立たず走りやすかった。
今日は栄浦でキャンプ。
夜は昔天文部の横小路の解説で、星を眺めた。
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7月18日
サロマ湖(栄浦)―ワッカ―コムケ原生花園―紋別―ウスタイベ千畳岩―クッチャロ湖
走行247Km
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栄浦キャンプ場にて、出発前
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ワッカを走って、サロマ湖第二湖口へ。
さらにダートを砂洲の先端へ向かって走るが、砂地でフロントを取られるので途中で
諦め、横小路のXTの荷物を下ろして、交替で乗って遊んだ。
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R238をひたすら北上。今日はクッチャロ湖でキャンプ。予想より明るい感じの湖で
人もたくさんいた。
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7月19日
クッチャロ湖―宗谷岬―稚内
走行120Km
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クッチャロ湖にて、出発前
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モケウニ沼は寂しく、殺風景だった。
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3度目の宗谷岬(うち一度は冬に列車で来た)
明日の早朝のフェリーで利尻に渡るので、今日は稚内まで行ってキャンプ。
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7月20日
稚内―(フェリー)―鴛泊(利尻島)
走行11Km
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フェリー乗り場まで走り、バイクを置いて利尻に渡る。乗り場もフェリーの中もすごい人。呆然。
鴛泊港では、民宿のバーチャンの呼び込みのペースにはまって、ここに宿を決定。天気が悪いので今日は
利尻登山は中止。かわりに姫沼に行く。これだけでもかなり疲れた。
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姫沼にて。ひと山越えてきたので、疲れ切った表情
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海岸にて。人手やウニがいた。
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夕方、ビール持って港を見下ろす展望台に登る
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7月21日
鴛泊(利尻島)―(フェリー)―稚内
走行10Km
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朝6時半ころ民宿を出発。苦行の末、めでたく利尻富士登頂を果たす。(登り4時間、下り1時間)
下って飲んだ甘露泉の水は最高。下のキャンプ場でビールで乾杯。
民宿でシャワーを浴びた後、フェリーで稚内に戻り、キャンプ。
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←8合目の山小屋のところで。背後に聳えるのが、これから登る頂上。
頂上にて、バックはローソク岩。標高は1778m→
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7月22日
稚内―ノシャップ岬―かぶと沼―稚咲内⇔豊富温泉
走行142Km
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稚内公園のキャンプ場にて
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出発の準備をしていると、LTDのチョッパーのおじさんが来てGNをみて
いろいろ話をする。自分もGNを持っていて、今車検中だそうだった。
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ノシャップ岬にて
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利尻島がくっきり見える。MTX50の世田谷ナンバーの女性ソロライダーが来る。
なかなかの美人だった。稀少也。
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抜海へ行く途中の海岸にて
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利尻島には雲ひとつない。
今日登っていれば山頂からの展望が楽しめたはずだ。残念。
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かぶと沼にて
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利尻島は陸続きのように見える。
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道北の日本海岸、サロベツ原野。オホーツク海側の猿払に較べて明るい天国のような処。
ノシャップ岬から天塩まで、海沿いに真っ直ぐなダートが延びる。やがてはそれも舗装されるのだろう。
南下する右手は海。稚咲内あたりで砂浜にテントをはる。Tシャツ・短パンの軽装で豊富温泉へ。変った泉質で
ちょっとぬるぬるする。風呂上り、ノーヘルでかっ飛ばして海岸まで。
ツブとイカ焼きで酒盛りだ。
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7月23日
稚咲内―豊富―天塩―鬼鹿―小平
走行164Km
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のんびり10時に稚咲内を出発。R40を南下して留萌へ向かう。
R232に入ったところで対向車がパッシング。ネズミ捕りに注意してゆっくり走るがやっていない。
天塩町に入って信号で発進した直後に警官が現れる。先頭の横小路だけが捕まってしまった。警察署内で抗議して
いたらしく2時間くらいかかったが、結局13キロオーバーで罰金5000円。昼食を2人で横小路に奢る。
ということで、今日は小平の青少年旅行村でキャンプ。
明日から田中は別行動なので、3人でのキャンプは今日が最後だ。
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R232のにしん番屋
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7月24日
小平―歩古丹―濃昼(浜益村)―札幌
走行191Km
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今日で3人は最後となった。思えば早い感じがする。3人で留萌へ。市内でR232はR231とR233に別れる。
俺と横小路はR231、田中はR233へ。お互いの無事を祈って別れる。今度会うのは研究室でだろう。
昨日のネズミ捕りのことがあるので、今日はゆっくり走る。R231は所々走りにくいダートがあった。
札幌で北大に行って、中央食堂で昼食。夜は札幌駅泊まり。GNのパンク修理で、寝たのは11時過ぎになった。
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3人最後のキャンプ地にて
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R231のトンネルを抜けたところ。岩の景色は豪快。
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7月25日
札幌―洞爺―落部―大沼
走行285Km
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久しぶりの駅宿は、少々恥ずかしかった。朝、また北大に行って観光する。横小路は今日は札幌に留まるということで、
別れとなる。R230を南下し、洞爺湖へ。途中、中山峠は大雨。仲洞爺キャンプ場でインスタントラーメン。
大沼までも降ったり止んだり。大沼駅は、中高生みたいなのがワンサカいて、山梨の清里みたいな雰囲気。
キャンプ場は割と静かでホッとする。
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北大ポプラ並木にて。ここで横小路ともお別れだ。
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一昨年来て気に入った仲洞爺キャンプ場にて
インスタントラーメン食べて、コーヒー飲んでいると、また雨。
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7月26日
大沼―函館― (フェリー)―大間―下風呂
走行166Km
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朝の大沼キャンプ場。ここもカラスが多い。テントをたたんでいると雨。
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R278は黄金道路を思わせる海岸の道だった。
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戸井の素掘りのトンネル
4〜5箇所、連続してあった。その手前の柱状摂理の岩とともに、迫力十分。
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ダートもある、R278を通ってひたすら函館まで来た。函館駅で休憩。パンを食いながら思案。
函館山は霧で夜景は見えそうにもない。1:45のフェリーで大間に渡る。乗り場にはバイクが4〜5台。
3度目の函館だったが、また夜景を見逃してしまった。
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